「補助金」があれば海外進出は成功するのか?

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海外進出や海外貿易を本気で考えるなら、ある程度の準備期間が必要です。最適なターゲットや商圏を探したり、かかる原価(コスト)と利益のバランスを正確に見積もったり、ターゲットや商圏に合った商品・サービスのプロモーションを考えたり――。戦略策定や現地調査から実際に事業をうまく走らせるまでに、数年は見ておく必要があるでしょう。

みなさんの中には、企業の海外展開をサポートしてくれる補助金の存在をご存知の方も多いかもしれません。しかし、補助金がもらえれば海外ビジネスの成功に大きく近づくのかというと、必ずしもそういうわけではないようです。日本企業の海外進出を支援するサイト「TENKAI」がお届けするこのコラム、今回は「補助金があれば海外進出は成功するのか?」についてお話をしたいと思います。

まずは補助金の正体について知りましょう

「補助金」は、国や地方自治体などが取り扱っている企業支援のための資金です。融資ではないので、いっさい返済する必要はありません。同じような位置づけの支援金に「助成金」がありますが、助成金は支給要件を満たしさえすれば原則受けられるのに対して、補助金は要件を満たしていても申請して審査を通らなければ受給できないという点が異なります(なお以下では、補助金・助成金を総称して「補助金」と記します)。

補助金は、創業時や新規事業のスタートアップ時といった余裕のないタイミングではぜひとも利用したい制度と言えるでしょう。実際、海外展開支援に関する補助金を利用して事業の拡大を実現した(逆に言えばそうした資金がなければ海外進出が難しかった)日本企業もたくさんあります。

「自治体の補助金制度」が招くよくある失敗

その1 “尻切れトンボ”になって頓挫する

かつては額の少なさが課題とされてきた補助金も最近では手厚くなってきましたが、自治体が設けている補助金の中にはいまだに小規模な支援もあります。冒頭でお話ししたように、海外進出の準備は長期戦です。小規模な補助金をあてにしすぎた事業計画を立ててしまうと、オフィスを決めたり、人材の雇用を進めたり、商品を大量に確保したりしているうちに資金繰りが苦しくなる――というパターンに陥ってしまいがちです。

その2 「目的がわからない出張」に終わる

自治体が設ける補助金の中には、ワンタイム(一時的)な制度も少なくありません。その代表例が展示会への出展支援。この補助金を使って海外に出張する経営者の方は多いですが、自ら先頭に立って商品をPRするわけでもなく、限られた時間内に商談を詰め込むわけでもなく、単なる「旅行」や「社会科見学」で終わってしまっているケースも散見されます。本気でアジア進出・海外進出を目指すなら、このワンタイムをいかに全体の計画の中で活かすかかが大切なポイントになってきます。

「もらうこと」ではなく「上手に活用すること」

戦略策定や現地調査からスタートアップまですべてが順調に進むというケースは実際にはほとんどなく、次から次へと出てくる課題を解決するためには少なくとも数年のスパンで事業を見ておく必要があります。しかし、小規模な支援やワンタイムな支援は資金面でのニーズをすべて満たすには程遠いことが多いため、海外進出の失敗につながってしまいやすいという背景があるようです。

“尻切れトンボ”になって資金繰りに苦労したり、目的がわからない海外出張を繰り返したりしないように、事業やプロジェクトに合った補助金や助成金を申請するようにしましょう。「返済するがない融資」といった意識で何となく使うのではなく、その後の成長戦略に基づいた有効な使い方をすることが、海外進出を成功させるポイントです。

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