「中国で日本人をだますのは日本人」は本当か?

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外務省の調べによれば、2014年10月1日時点で海外展開を果たしている日本企業は6万8000拠点以上にのぼるそうです。進出先でもっとも多いのが、3万2667拠点の中国。実に全体の50%近くが中国であり、3位のインドが約6%(3880拠点)であることを考えれば、近年増加傾向にあるアジア進出の候補国の中でも突出した数字と言えます。

海外展開には当然リスクも付きものですが、中国進出におけるリスクで注意しておきたいのが「日本人による詐欺」です。「日本企業をだますのは中国人じゃないの!?」と思われるかもしれませんが、最近では日本人にお金をだまし取られるという被害が多くなっています。海外展開に関するリアルな情報をお届けする当コラム、今回は「中国で日本人をだます日本人」について掘り下げてみたいと思います。

日本人をだます日本人の特徴

・ある程度現地で知名度がある
・「○○コンサルタント」などと名乗っていることがある
・現地の信頼できそうなパートナーを連れてくる
・知り合いの知り合い

 

日本人をだます日本人の一番の特徴は、とにかく信用できそうなことです。個人ではなく企業として活動しているケースも多く、どこに相談すべきか迷っている経営者の方が安心して相談しやすい条件をそろえています。特に警戒したいのは、「知り合いの知り合い」。「あの人の知り合いだからきっと問題ない」と思ってしまいがちですが、その方と知り合いの方がどのような付き合いをしているのかはよくわからない――と考えないと、痛い目を見ることがあります。

日本人にだまされやすい日本人の特徴

・中国への渡航歴・在住歴がほとんどない
・高学歴もしくは高キャリアである
・年齢が高く人を見る目には自信がある
・「知り合いの知り合い」を信じやすい

 

これらはすべて、日本人にだまされやすい日本人の特徴です。頭の回転が早く、これまでの経験から信用できる人とそうでない人の見極めにも自信を持っているという人のほうが、実は危ないと言えるかもしれません。そして、「知り合いの知り合い」を信じやすいという点も特徴です。地場のことにある程度精通していなければ、詐欺の被害に遭いやすくなる確率は高くなると言えるでしょう。

だまされる日本人とだます日本人の共通点

実は、両者にはある共通点があります。それは、「60~70代が多い」ということです。

だまされる日本人のほうで60~70代の方が多い理由として考えられるのは、一つは「情」「絆」「同胞意識」といったところを大切にする世代であることです。異国の地で手と手を取り合っていく関係だからだまされるはずがない、という思いがどこかにあるのかもしれません。だます日本人のほうでは、「同世代のほうが、親近感が沸いて心を砕きやすい」という心理が狙われているという背景が考えられます。

「人を信じること」にもリスクがあります

「日本企業が中国撤退!」と聞くと、物価・人件費の高騰や中国人労働者による不正、反日感情の高まりによる売上減などをイメージされる方が多いと思いますが、日本人にだまされてリターンの見込みがない出資を強いられたり、使途不明の「コンサル料」を段階的に請求されたり、任せた原資を持ち逃げされたりするケースもあるのです。

中国には北京や上海、香港といった大都市を中心に13万人以上の日本人がいると言われています。在留邦人自体が多いので現地に精通している日本人も必然的に多くなりますが、それが海外進出を目指す企業経営者の警戒感を薄めている側面があるのかもしれません。ビジネスの前提は「人を信じること」ですが、信じる相手を間違えるリスクをふまえて、海外では細心の注意を払う必要があるということでしょう。